2002 年 55 巻 5 号 p. 234-238
腸間膜脂肪織炎は原因不明の稀な非特異性炎症性疾患である.肛門周囲Paget病に対して腹会陰式直腸切断術を施行し,造設したS状結腸ストーマの腸間膜に術後早期に脂肪織炎をきたした1例を経験したので報告する.症例は肛門痛を主訴とし,肛門周囲paget病と診断された77歳の男性で,腹会陰式直腸切断術を施行した.術後腸閉塞をきたし保存的に加療したが,ストーマからの指診によりS状結腸壁の著明な硬化と内腔の狭小化が確認された.さらに小腸造影で完全閉塞を認めたため癒着性イレウスの診断で再手術を施行した.小腸は癒着により閉塞し,S状結腸腸間膜は硬く肥厚してS状結腸の内腔が著しく狭小化,鉛管状を呈していた.小腸部分切除と左半結腸切除を行い,横行結腸にストーマを再造設した.病理組織学的に腸間膜脂肪織炎と診断した.本疾患はその病因や予後など不明な点も多く,今後の検討が望まれる.