2003 年 56 巻 8 号 p. 385-391
目的:大腸sm癌におけるリンパ節転移危険因子について外科切除標本を用いて病理組織学的に解析した.対象と方法:当院外科において腸切除が施行された大腸sm癌27例.深達度,肉眼型,脈管侵襲などの一般臨床病理学的検査と,癌浸潤先進部の性状を簇出像およびMatrilysin(以下MMP-7)の発現で調べた.簇出の有無は抗サイトケラチン(以下CK)抗体を用いた.MMP-7の発現は癌先進部の基底膜側の細胞質に一部でも発現を認めた場合に陽性と判定した.結果:リンパ節転移陽性を3例(ll.1%)に認めた.各因子とリンパ節転移について統計学的に解析した結果,MMP-7の発現のみがリンパ節転移と優位に相関した(P<0.05).考察:癌先進部に発現するMMP-7を指標とした判定基準により,内視鏡的切除後の追加腸切除の適応決定やリンパ節郭清範囲決定などの臨床応用に期待されるものと思われた.