大腸肛門学会誌には大腸領域の論文と直腸肛門領域の論文とがあるが,今回は特に後者の立場から言及させて頂く.近年EBMが取りざたされており,evidenceに基づいた治療を行うことが重要視されてきており,医学論文はこのevidenceの資料として,非常に大切なものであることは論を待たない.論文は大きく2つに分類され,一つは新しい科学の発展のための役割を担うものであり,もう一つはevidenceとしての役割を果たす論文である(もちろんこの両者の役割を同時に果たす論文もある).ところが,これまでの本誌の論文には,私自身も含めて,EBMとしての価値が希薄な論文が多かったように思う.
そこで,EBMとして評価のある論文を疾患別に求め,本誌の特集としては如何かと提案する.まず,基本的な肛門疾患を手始めとして取りかかってはどうか.ご承知のように,EBMとして最も優れていると思われるデータは,複数のRCT(randomized controlled trials)のmeta analysisである.これはなかなか行えるものではないが,特集を組むことで一気に成就できるのではなかろうか.ただし,外科手術に関しては,RCTは因難な場合が多く,質のいいcase control studyでevidenceを集めざるを得ないだろうが,この場合には,いろいろなバイアスが加わりやすい.この点については,統計に長けた方に指導,アドバイスが得られるようなシステムを作ることが望まれる.本学会でもガイドラインを作るべき時がくるかと思われるが,その前にEBMとなる論文を自ら作っておくことが必要ではないだろうか.
抄録全体を表示