日本大腸肛門病学会雑誌
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56 巻, 8 号
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  • 吉川 智道, 佐々木 一晃, 高坂 一, 大野 敬, 仲川 尚明, 有村 佳昭, 平田 公一
    2003 年 56 巻 8 号 p. 385-391
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    目的:大腸sm癌におけるリンパ節転移危険因子について外科切除標本を用いて病理組織学的に解析した.対象と方法:当院外科において腸切除が施行された大腸sm癌27例.深達度,肉眼型,脈管侵襲などの一般臨床病理学的検査と,癌浸潤先進部の性状を簇出像およびMatrilysin(以下MMP-7)の発現で調べた.簇出の有無は抗サイトケラチン(以下CK)抗体を用いた.MMP-7の発現は癌先進部の基底膜側の細胞質に一部でも発現を認めた場合に陽性と判定した.結果:リンパ節転移陽性を3例(ll.1%)に認めた.各因子とリンパ節転移について統計学的に解析した結果,MMP-7の発現のみがリンパ節転移と優位に相関した(P<0.05).考察:癌先進部に発現するMMP-7を指標とした判定基準により,内視鏡的切除後の追加腸切除の適応決定やリンパ節郭清範囲決定などの臨床応用に期待されるものと思われた.
  • 堀越 邦康, 今村 大朗, 山村 卓也
    2003 年 56 巻 8 号 p. 392-400
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸再建後の消化管運動障害の機序を電気生理学的および組織学的に明らかとすることを目的として本研究を行った.雌犬計9匹を使用し,器械吻合にて側端吻合を行った.蠕動測定のため吻合部に縦横2カ所,口側,肛門側ともに約3cm離しstrain gauge transducerを縫合固定した.術直後,術後2週,4週にポリグラムを用い各点最大収縮値(CI),収縮運動量(MI)を計測した.4週目に吻合部を摘出し,HE染色,免疫組織染色を行い,Auerbach神経叢間距離,介在する瘢痕組織の長さとCIおよびMIとの関係を調べた.その結果,術後経過と共に吻合部におけるCIおよびMIは回復傾向を示したが,口側,肛門側に比べ低値であった。吻合部の蠕動波は術直後では不規則であったが,術後4週で規則的になった.神経叢間距離とCIおよびMIは強い相関関係を示した.以上から器械吻合による側端吻合では,運動機能の回復は神経叢間距離に関係することが明らかとなった.
  • 桃井 寛仁, 白野 純子, 石川 稔晃, 大澤 和弘, 福本 学
    2003 年 56 巻 8 号 p. 401-405
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    下部直腸・肛門管は静脈叢に富み,癌細胞が門脈系・下大静脈系を介して血行性転移することは多い.しかし静脈もしくはリンパ管を介して直腸癌が肛門管へ脈管性転移することはまれである.今回,肛門管への脈管性転移と考えられた転移巣で発見された進行直腸癌の1例を経験した.症例は69歳,女性.約10年間にわたり,排便後の肛門粘膜の脱出を認めたが放置していた.2カ月前より出血を伴い,他院で痔核硬化療法をうけたが改善しなかった.根治術目的で本院を受診し,Goligher分類III度の内痔核の診断で結紮切除術を施行した.術中,肛門縁に潰瘍性病変を認め,病理所見からこの病変は直腸癌の転移と判明した.主病巣はその口側にあり,多発性肝転移を伴っていたがイレウス回避のため腹会陰直腸切断術,肝動注リザーバー留置を行った.病理組織検査は中分化型腺癌,se,a2v3,ly3,n4であった.直腸癌の特異な転移様式と考えられた.
  • 岡本 規博, 前田 耕太郎, 丸田 守人, 青山 浩幸, 加藤 良一
    2003 年 56 巻 8 号 p. 406-411
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    骨盤底の解剖学的形態異常に起因する疾患にrectoceleやenteroceleがある.Rectoceleは臨床症状やdefecographyのみで比較的容易に診断可能であるが,enteroceleの診断にはperitoneographyを伴ったdefecographyなどの侵襲を伴う検査が必要とされる.著者らは,排便動作を行いつつ高速ヘリカル撮影されたマルチスライスCTによる多断面再構成像を作成し,この撮影法をCT-defecography撮影と名付け,有症状のrectoceleに対し術前に本撮影を行った.CT-defecographyによりrectoceleに合併したentero-celeを3例確認できた.これらの症例にanterior levatorplastyおよび腹膜部分切除,縫縮術を施行した.術後は,術前の症状は全て消失し排便の満足度も充分であった.
  • 須田 和義, 菊田 信一, 早川 一博, 木村 光宏, 寒竹 泰広
    2003 年 56 巻 8 号 p. 412-416
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    肛門尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)を病原体とするウイルス性疣贅であるが,特異的治療法がなく,侵襲少なくして確実に治療することが容易ではない.これに対し,単純疱疹などに使用される抗ウイルス外用剤'が優れた効果を示す場合がある.視診,生検により肛門尖圭コンジローマと診断された13例に対し,抗ウイルス外用剤ビダラビンを患者に渡して最低2週間以上塗布させた.その結果,完全消失6例,部分的消失2例,消失なし5例で,6割に有効であった.完全消失例について,効果発現時期は9日から32日と幅があった.また再発,副作用は認めなかった.肛門尖圭コンジローマに抗ウイルス外用剤ビダラビンが効果を示す例があることは明らかであり,治療の第一選択として試す価値が充分あると考えられる.
  • 勝野 秀稔, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 花井 恒一, 佐藤 美信, 升森 宏次
    2003 年 56 巻 8 号 p. 417-422
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後肺転移に対する胸部単純X線検査(以下,X線と略)と胸部CT検査(以下,CTと略)の意義を明らかにするために,教室で経験した大腸癌治癒切除症例543例中,初再発部位が肺で,retrospectiveにCTおよびX線を再検索可能であった27例を対象に検討した.
    CTとX線で発見された陰影の大きさには有意差はなかったが,微小病変(5mm以下)のうち,X線で検出できた病変はCTで発見された微小病変の11.1%のみであった.しかし,6mm以上の病変ではX線でも83.3%の病変が同定可能であった.
    X線発見例でも,12例(44.4%)の症例はX線の再検索により病変が同定され,心・大血管,骨などとの重なりに注意して読影することにより,早期発見が可能と思われた.
    さらに,この12例中,9例(75%)は1人の医師のみが読影に携わっており,ダブルチェックによって「見落とし」を減らしうる可能性が示唆された.
  • 永田 浩一, 遠藤 俊吾, 日高 英二, 吉田 達也, 出口 義雄, 辰川 貴志子, 石田 文生, 田中 淳一, 工藤 進英
    2003 年 56 巻 8 号 p. 423-424
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 高野 正博
    2003 年 56 巻 8 号 p. 425
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸肛門学会誌には大腸領域の論文と直腸肛門領域の論文とがあるが,今回は特に後者の立場から言及させて頂く.近年EBMが取りざたされており,evidenceに基づいた治療を行うことが重要視されてきており,医学論文はこのevidenceの資料として,非常に大切なものであることは論を待たない.論文は大きく2つに分類され,一つは新しい科学の発展のための役割を担うものであり,もう一つはevidenceとしての役割を果たす論文である(もちろんこの両者の役割を同時に果たす論文もある).ところが,これまでの本誌の論文には,私自身も含めて,EBMとしての価値が希薄な論文が多かったように思う.
    そこで,EBMとして評価のある論文を疾患別に求め,本誌の特集としては如何かと提案する.まず,基本的な肛門疾患を手始めとして取りかかってはどうか.ご承知のように,EBMとして最も優れていると思われるデータは,複数のRCT(randomized controlled trials)のmeta analysisである.これはなかなか行えるものではないが,特集を組むことで一気に成就できるのではなかろうか.ただし,外科手術に関しては,RCTは因難な場合が多く,質のいいcase control studyでevidenceを集めざるを得ないだろうが,この場合には,いろいろなバイアスが加わりやすい.この点については,統計に長けた方に指導,アドバイスが得られるようなシステムを作ることが望まれる.本学会でもガイドラインを作るべき時がくるかと思われるが,その前にEBMとなる論文を自ら作っておくことが必要ではないだろうか.
  • 2003 年 56 巻 8 号 p. 426-440
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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