日本大腸肛門病学会雑誌
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日本住血吸虫卵を認めた直腸癌の1例
佐藤 美信前田 耕太郎花井 恒一升森 宏次小出 欣和青山 浩幸勝野 秀稔黒田 誠佐藤 昭二
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キーワード: 日本住血吸虫, 直腸癌, 発癌
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2005 年 58 巻 8 号 p. 432-437

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抄録

日本住血吸虫症と大腸癌との合併が疫学的に注目されているが,その因果関係は明らかではない.今回,著者らはS状結腸癌に日本住血吸虫卵の介在を認めた1例を経験したので,本邦報告例の集計とともに報告する.症例は82歳,男性.50歳まで福岡県で漁師をしていた.血便を主訴に近医を受診し,S状結腸癌と診断され当科へ入院となった.術前精査では遠隔転移を認めず,S状結腸切除術を施行した.腫瘍は2.5×2×1.5cmの2型で,H0,P0であった.病理所見は高分化腺癌,mp,ly2,v0,n1,stage IIIaであった.術前には指摘されなかったものの腫瘍部および正常部腸管の粘膜下層から筋層に日本充住血吸虫卵を認めた.虫卵は正常部に比べて腫瘍部でより多く観察された.患者は術後16カ月後にも直腸腫瘍に対して経肛門局所切除術を受け,病理結果は管状絨毛腺腫であった.初回手術後50カ月経過した現在まで無再発生存中である.

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