抄録
【背景】慢性腎臓病(CKD)は心臓手術後の重要なリスク因子の一つである.本研究は,術前に人工透析を導入されていないCKDでの冠動脈バイパス術症例を対象とし,hANP投与が腎機能に及ぼす効果を,短期および長期予後について検討した.【方法】303例がhANP群とプラセボ投与群に振り分けられた.一次エンドポイントは術後透析回避率,血清クレアチニン値,eGFRとした.二次エンドポイントは,早期予後,長期予後,レニン活性,アンギオテンシンII,アルドステロン,ナトリウム排泄率などとした.【結果】術後早期および遠隔期死亡は両群間で差はなかったが,術後心イベント発生例,透析が必要となった例は有意にhANP群で少なかった.術後透析回避率は,hANP群で1年99.3%,5年97.8%,10年97.8%,プラセボ群で1年91.6%,5年90.1%,10年90.1%と有意にhANP群が高かった(p=0.0014).【考察】CKD合併の冠動脈バイパス術患者において,hANPが術後急性期の腎保護を行うことで,遠隔期の心イベント,透析導入を予防すると考えられた.