2006 年 55 巻 2 号 p. 70-74
Type 316L鋼ならびに2種類のN添加オーステナイトステンレス鋼に対してオージェ分光分析を行った. N添加鋼は16%Cr, 14%Ni, 2%Moおよび0.17%Nを含む16Cr-14Ni-2Mo-0.17N鋼ならびに18%Cr, 2%Moおよび1%Nを含む18Cr-2Mo-1N鋼とした. 0.5mol・dm-3 NaClを含む0.5mol・dm-3 H2SO4中で活性溶解処理を施すと, 16Cr-14Ni-2Mo-0.17N鋼ならびに18Cr-2Mo-1N鋼表面のCrは濃化したが, いずれの場合もType 316L鋼表面のCr濃度を超えることはなかった. Type 316L鋼ならびに18Cr-2Mo-1N鋼に対してすきま腐食試験および再不働態化試験を行った. 35℃の人工海水中ですきま腐食が発生および成長した最低電位は, 18Cr-2Mo-1N鋼の場合Type 316L鋼に比較して大幅に貴な値となった. Type 316L鋼の場合, 腐食すきま再不働態化電位は腐食すきま深さに依存しなかった. 一方, 18Cr-2Mo-1N鋼の場合, 腐食すきまが深くなるに従って再不働態化電位は卑化し, 腐食すきま深さが0.3mmに達すると, 18Cr-2Mo-1N鋼とType 316L鋼との間で腐食すきまの再不働態化電位に差は認められなくなった.