有機金属化学蒸着 (MOCVD) 法により, Fe, CrおよびNiを含む種々の複合酸化物皮膜をステンレス鋼表面に形成し, 高温水中での耐食性および放射性腐食生成物の蓄積挙動に及ぼす皮膜の種類と成膜温度の影響について検討評価した. BWRおよびPWR一次系模擬条件での浸漬試験の結果, MOCVD法により形成した酸化物皮膜は高温水中で安定であった. Cr
2O
3皮膜付試験片の放射能の蓄積量は, 成膜温度が高いほど小さくなった. XRDスペクトルの観察結果から, 皮膜の結晶性の向上が, 耐食性を向上させるとともに, 放射能の蓄積量を低下させると推測された. 一方, NiO-Fe
2O
3皮膜は, 放射性核種である
60CoがNiFe
2O
4構造を有する酸化物皮膜へ取り込まれるため, 放射能の蓄積量を低下させることが出来なかった. 以上の結果より, 結晶性に優れたCr
2O
3皮膜を形成することにより, BWRおよびPWR一次系環境中でステンレス鋼の腐食を抑制し, 放射能の蓄積量を低減できることが明らかとなった.
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