空気リークは吸収式冷凍機本体の腐食トラブルの主原因と考えられている. 本報では, 空気リークシステムを有する20冷凍トン吸収式冷凍機本体を用いて, 空気リークを模擬した腐食加速試験を実施した. 空気リーク速度を変化させ, 冷凍機内の溶存酸素濃度変化および機内LiBr溶液及び冷媒中の炭素鋼及び銅の腐食生成物 (イオンおよび酸化物) の濃度変化を測定した.
一方, 種々のインヒビターを含むLiBr溶液中で炭素鋼の腐食電位上昇に及ぼす温度, 溶存酸素および銅イオン濃度の影響を検討した. また, 種々の温度において, アノード分極曲線より炭素鋼の孔食電位を決定した. 腐食電位の上昇挙動と孔食電位の関係から, 炭素鋼の腐食損傷加速に及ぼす影響因子を考察した. 以上より, 空気リークによる炭素鋼の腐食加速プロセスとして, 以下のステップをモデル化し提案した.
(1) 空気リークにより銅イオンが溶出.
(2) 酸素+インヒビタ+銅イオンの重畳作用により炭素鋼の腐食電位が上昇し, 孔食電位に近づく.
(3) 孔食電位を越える条件は, 酸素+インヒビタ+銅イオンの特殊な組合せでのみ達成される.