抄録
本論文は, アコースティック・エミッションと腐食電位揺動を測定して調べた二相ステンレス鋼の363K, 35%MgCl2溶液中における環境助長割れのメカニズムを議論した. 著者らは, 巨視的き裂の成長特性が測定できる新しい破壊力学試験装置を使用した. 二相ステンレス鋼は, この溶液中においては, オーステナイト粒のAPC-SCCよりは, フェライト粒の遅れ破壊を受けることがわかった. 試験期間中には強力なAEが検出されたが明瞭な腐食電位揺動は検出できなかった. AE音源はき裂先端から1~3mm離れた, 遅れ微小破壊の発生する高静水圧部に標定された. 原波形解析は, 高速の脆性破壊を明らかにした. 破面観察は, 水素によるフェライト相の遅れ破壊とそれに続くオーステナイト相の延性破壊を支持した.