材料と環境
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13Cr ステンレス鋼製部品ヘルドの腐食すきま再不動態化臨界塩化物イオン濃度測定
中津 美智代野村 光司深谷 祐一篠原 正
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2007 年 56 巻 7 号 p. 309-313

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抄録
ウォータージェットルーム(WJL)の部品であるヘルド(13Cr ステンレス鋼,340 mml×2 mmw×0.3 mmt)は,水道水中ですきま腐食を起こす.本報では,40 mg/L以下の塩化物イオン(Cl)を含む水溶液中におけるヘルドの金属/金属間すきまの腐食すきま再不動態化臨界塩化物イオン濃度(CR, CREV)の測定法について検討した.再不動態化段階(S3)の前の発生段階(S1)および成長段階(S2)において,すきま腐食を成長させるために最適な電流電位操作を調査した.ヘルドは2枚の試験片に切断し,この2枚の試験片を重ね合わせて金属/金属間すきまを作製した.500 mg/L Cl濃度溶液中のS1でアノード分極法によりすきま腐食を発生させた.S2において,定電位法で試験片を電位200 mV vs. SCEに保持し,すきま腐食を成長させた場合,腐食孔は過剰に成長し,2 枚の試験片はすきま構造を保持しなかった.別途,S2において,試験片を200 μAに保持する定電流法ですきま腐食を成長させた.S3へ移行する前に試験液を希釈して,試験片の電位をS3の保持電位より50 mV低い電位にまで上昇させた.その結果,S3 にて,2回の試験液希釈後,電流の上昇が観察されたことから,すきま腐食の成長が確認された.そして,この電流の上昇が見られなくなった試験液の最大Cl濃度をCR, CREVとした.CR, CREV測定の再不動態化法において,試験片の電気量を時間で制御できる定電流法を用いて,すきま腐食を成長させることが望ましい.決定されたCR, CREVと電位の関係は,既に報告されている水道水中の Cl濃度とER, CREVの関係式の延長上に位置することを確認した.
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© 2007 公益社団法人 腐食防食学会
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