ウォータージェットルーム(WJL)の部品であるヘルド(13Cr ステンレス鋼,340 mm
l×2 mm
w×0.3 mm
t)は,水道水中ですきま腐食を起こす.本報では,40 mg/L以下の塩化物イオン(Cl
−)を含む水溶液中におけるヘルドの金属/金属間すきまの腐食すきま再不動態化臨界塩化物イオン濃度(
CR, CREV)の測定法について検討した.再不動態化段階(S3)の前の発生段階(S1)および成長段階(S2)において,すきま腐食を成長させるために最適な電流電位操作を調査した.ヘルドは2枚の試験片に切断し,この2枚の試験片を重ね合わせて金属/金属間すきまを作製した.500 mg/L Cl
−濃度溶液中のS1でアノード分極法によりすきま腐食を発生させた.S2において,定電位法で試験片を電位200 mV vs. SCEに保持し,すきま腐食を成長させた場合,腐食孔は過剰に成長し,2 枚の試験片はすきま構造を保持しなかった.別途,S2において,試験片を200 μAに保持する定電流法ですきま腐食を成長させた.S3へ移行する前に試験液を希釈して,試験片の電位をS3の保持電位より50 mV低い電位にまで上昇させた.その結果,S3 にて,2回の試験液希釈後,電流の上昇が観察されたことから,すきま腐食の成長が確認された.そして,この電流の上昇が見られなくなった試験液の最大Cl
−濃度を
CR, CREVとした.
CR, CREV測定の再不動態化法において,試験片の電気量を時間で制御できる定電流法を用いて,すきま腐食を成長させることが望ましい.決定された
CR, CREVと電位の関係は,既に報告されている水道水中の Cl
−濃度と
ER, CREVの関係式の延長上に位置することを確認した.
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