抄録
炭素鋼は高レベル放射性廃棄物の地層処分用オーバーパック容器の材料として最も有望であると考えられている.この処分環境中での耐食性に及ぼす合金元素の影響を知るために,pH 8~13の塩化物含有模擬ベントナイト接触水を含浸させた圧縮ベントナイト中での炭素鋼と各種低合金鋼の腐食減量,分極曲線および電気化学インピーダンススペクトルを測定した.その結果,0.5%Ni添加はこの環境中での耐食性を向上させ,逆に0.5%Mo添加は耐食性を低下させることが分かった.腐食の初期段階においては,0.5%Ni鋼は比較的大きな溶解速度を示した.しかし,この鋼の溶解速度は保護皮膜の形成によって短時間で減少した.0.5%Mo鋼および炭素鋼の溶解速度は,腐食の初期段階においては0.5%Ni鋼の溶解速度よりも小さいが,時間と共に減少することは無かった.