日本小児血液・がん学会雑誌
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原著
小児脳腫瘍治療における制吐剤:アプレピタントの安全性及び有効性
柏瀬 しのぶ藍原 康雄海老原 京子深谷 寛高橋 麻利子高橋 賢成岡田 芳和木村 利美
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2015 年 52 巻 5 号 p. 381-386

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抄録
【目的】小児脳腫瘍治療における化学療法では,高度・中等度催吐性抗がん剤が使用されることから,悪心嘔吐の発現頻度が高く,患児のQOLを損なうことがある.近年,NK-1(neurokinin-1)受容体拮抗剤であるアプレピタント(以下,APR)が新規制吐剤として開発されたが,小児における報告は少ない.我々はAPRを併用して化学療法を施行した20歳未満の脳腫瘍症例を対象に,APR非投与症例をコントロール群として安全性と有効性を比較検討した.【方法】各群治療法ごとに,化学療法開始後6日間の悪心嘔吐の発現状況,食事摂取状況,有害事象について調査し,統計処理を行った.意思表示可能な患児においては,MASCC制吐に関する質問票(MAT)による評価も併せて行った.【結果】シクロホスファミド+カルボプラチン+エトポシド療法(以下,CCE療法)ではAPR併用群において非嘔吐率,非悪心率,食事摂取可能な症例の割合がそれぞれ90.5%,66.7%,95.2%で,コントロール群に比してそれぞれ27.2%,16.7%,41.9%増加した.また,カルボプラチン+エトポシド療法(以下,PE療法)ではAPR併用群において非嘔吐率,非悪心率がそれぞれ100%,88.9%で,コントロール群に比してそれぞれ19.8%,4.5%増加した.重篤な副作用の発現はなく,特に高度催吐性抗がん剤を含むCCE療法においてAPRの有効性が認められた.【結論】APRは,小児に対する制吐剤として有用かつ安全な薬剤と考えられる.
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© 2015 日本小児血液・がん学会
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