抄録
鋼材の大気腐食は海岸部で巻き上げられ,橋梁周辺に輸送された海塩粒子の量に依存する.しかしながら,大気中に浮遊する海塩粒子が鋼材に付着することによって,鋼材表面の付着Cl−量を増加させるプロセスは明らかとなっていない.
そこで,本研究の目的は観測結果に基づいて,大気中に含まれるCl−濃度と鋼材表面に付着したCl−量との関係を明らかにするとともに,地上の風向,風速が付着Cl−量に及ぼす影響を明らかにすることである.
その結果,大気中のCl−濃度と付着Cl−量に正の相関があること,付着Cl−量は地上風の風速に強く依存することがわかった.したがって,鋼材表面に付着するCl−量を正しく求めるためには,大気中のCl−濃度だけでなく,地上風の状況を考慮しなければならない.