放射性廃棄物の地層処分施設とその周辺の化学的条件の形成に果たす硝酸イオン(NO
3−)と金属との化学反応の役割を決定するために研究を行っている.高硝酸塩濃度条件でのNO
3−と金属の化学的相互作用を理解し,既報のモデルを改良するために,閉鎖系で,高アルカリ性かつ高NaNO
3濃度の水溶液を用いた炭素鋼の浸漬試験及び自然浸漬電位の測定試験を実施した.またモデルの構成要素であるNO
3−のNO
2−への還元反応の速度式を決定するために,高硝酸塩濃度の水溶液中で,炭素鋼を作用電極としたカソード定電位電解実験を実施した.
カソード定電位電解実験の結果から,既報モデルで採用した[NO
3−]に対して線形のNO
3−のNO
2−への還元反応速度式は,高NaNO
3濃度条件(≧1 mol/dm
3)では,過大な反応速度を与えることがわかった.これを改良するため,NO
3−は,電荷移動に先立ち炭素鋼表面に Langmuir 型の吸着をすると仮定して,[NO
3−]に対して非線形の反応速度式を導出し,電位0.85 V vs. SHE,pH 12.5の条件での実測値を用いてカーブフィッティングによりパラメーターを決定した.この新たに決定したNO
3−のNO
2−への還元反応速度式をモデルに組み込み,高NaNO
3濃度域でのアンプル試験及び自然電位測定試験の結果を解析し,自然浸漬電位,化学種量の変化の傾向及び化学種量の値自体ともおおむね再現することができた.
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