NbAl3金属間化合物の酸化挙動を1073および1173 Kにおいて調査した.特にペスト酸化現象の抑制に及ぼすNaCl蒸気濃度の効果に注目した.NaCl蒸気を含まない酸素中でのNbAl3の質量増加量は非常に大きく,ペスト酸化現象が見られた.一方,数十vol. ppmのNaCl蒸気が含まれた酸素中では,実験時間範囲内で質量増加量は抑えられ,123ppmのNaCl蒸気を含む酸素中に至っては質量増加がほとんどなかった.さらに,質量増加量が0.05kg m-2以下のときには,ペスト現象は見られなかった.酸化後の試料のX線回折およびSEM観察によれば,ペスト現象の起こらなかった試料は比較的緻密なAl2O3の皮膜に覆われていたが,ペスト現象を起こした試料は主にAlNbO4から成るスケールを生成した.熱力学的考察から,NaCl蒸気は雰囲気中に微量のCl2ガスを発生させ,合金/スケール界面の酸素ポテンシャルが低い場所ではAlを選択的に塩化し,次いで,生成したAlCl3は酸化されて保護性のAl2O3を生成することが考えられた.このAl2O3生成メカニズムがペスト酸化抑制モデルとして提案された.最終的にこれらの結果より,雰囲気に微量のNaCl蒸気を添加することによってNbAl3のペスト酸化を抑えられることが明らかとなった.