Zairyo-to-Kankyo
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論文
すきま内模擬溶液中における二相ステンレス鋼の優先溶解挙動の電位依存性
青木 聡伊藤 淳貴八鍬 浩宮坂 松甫酒井 潤一
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2011 年 60 巻 8 号 p. 363-367

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抄録

本研究では,腐食すきま内模擬溶液中で,二相ステンレス鋼の優先溶解挙動と保持電位およびその時の経過時間との関係を調べた.活性態電位領域(-370, -300および-260 mV vs. SCE)に定電位保持した時の電流密度は試験開始後,ある値まで減少し,その後は24時間の試験終了まで経過時間によらずほぼ一定の値を示した.不働態領域(-200 および-150 mV)では,試験開始後数時間で電流密度が大きく減少し,その後は試験終了まで低い値を示した.全電位領域において,定電位保持試験で求めた電流密度の値は,動電位アノード分極曲線から得られた値に比べ,1桁程度小さくなった.活性態領域のうちの卑側の電位(-370 mV)ではフェライト相が,また貴側の電位(-260 mV)ではオーステナイト相が優先溶解し,不働態領域では両相が全体的に不働態溶解することが確認された.この溶解挙動の傾向は,15分間の定電位保持試験と24時間の定電位保持試験とで同一であった.また,活性態領域で定電位保持した場合の溶出金属イオン量の割合は各保持電位における優先溶解相の化学組成に近い値となった.すきま内溶液への溶出金属元素の組成は優先溶解相の化学組成を反映しているものと考えられる.

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© 2011 公益社団法人 腐食防食学会
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