抄録
酸化物安定化剤という視点から,種々のインヒビターを含む水道水中で炭素鋼の腐食電位と腐食速度を測定し,インヒビターの作用を検討した.腐食電位 (V vs. SSC) の違いから,インヒビターはA: -0.1~0.1 V,B: -0.3~-0.2 V,およびC: -0.7~-0.5 Vの三つのタイプに分けられた.タイプAは不働態化剤として作用し,γ-Fe2O3皮膜の安定領域である最も貴な腐食電位を示した.タイプBの腐食電位はFe3O4皮膜で覆われた炭素鋼の電位に相当している.タイプCは卑な電位を示した後,徐々に貴化し,タイプBの電位領域に漸近した.これは内層酸化皮膜の腐食抑制作用が時間と共に促進されるためと考えられた.したがって,インヒビターの作用は表面酸化物皮膜を安定化することと結論した.