材料と環境
Online ISSN : 1881-9664
Print ISSN : 0917-0480
ISSN-L : 0917-0480
61 巻, 11 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
展望
解説
  • 村田 朋美
    2012 年 61 巻 11 号 p. 414-421
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/04/26
    ジャーナル フリー
    持続可能な社会を構築するためには資源・環境問題に代表されるような,内容が複雑で関係者が多い問題を解決しなくてはならない.2002年,World Congressでサステイナビリティ科学と言う学術領域が提案された.それは細分化された科学群を分野を横断して目的に合わせて統合し(1)問題を俯瞰して課題を抽出する力,(2)課題を解決する手法や技術を開発する力を導き出すことであった.材料科学には製品のライフサイクルを通して使用性能の信頼性を高め,安全性や物質循環における社会的責任を果たす役割が付加されている.従って,製品の腐食や腐食疲労など時間に依存する性能劣化を予測かつ抑制するシステムツールを開発し,製品のデザイン段階から組み込むことが望ましい.
材料と環境2012 速報論文特集
  • 山手 利博
    2012 年 61 巻 11 号 p. 429-433
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/04/26
    ジャーナル フリー
    給湯用アルミニウムめっき鋼管 (125 A) が使用開始約6年で腐食のため穿孔され漏水した.平均腐食速度は使用期間から0.76 mm/年と計算され鋼管の腐食速度として非常に大きい.腐食した配管の解析,めっき欠陥を設けたアルミニウムめっき鋼試験片による温水槽 (60℃) と給湯配管内での腐食試験を行った.いずれのアルミニウムめっき鋼欠陥部においても,めっき層を残したまま素地の鋼の腐食がみられた.また,60℃の温水槽中におけるアルミニウムめっき鋼 (アルミニウムめっき鋼表面=純アルミニウム層,鋼とアルミニウムの合金層,鋼) の自然電位を測定した.純アルミニウム層,鋼とアルミニウムの合金層とも60℃および常温で鋼に対して貴な電位を示した.これらの結果から,腐食原因はアルミニウム (特に鋼-アルミニウム合金層) と鋼の極性逆転によって発生した局部腐食と考えられる.
  • 高崎 新一
    2012 年 61 巻 11 号 p. 434-437
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/04/26
    ジャーナル フリー
    酸化物安定化剤という視点から,種々のインヒビターを含む水道水中で炭素鋼の腐食電位と腐食速度を測定し,インヒビターの作用を検討した.腐食電位 (V vs. SSC) の違いから,インヒビターはA: -0.1~0.1 V,B: -0.3~-0.2 V,およびC: -0.7~-0.5 Vの三つのタイプに分けられた.タイプAは不働態化剤として作用し,γ-Fe2O3皮膜の安定領域である最も貴な腐食電位を示した.タイプBの腐食電位はFe3O4皮膜で覆われた炭素鋼の電位に相当している.タイプCは卑な電位を示した後,徐々に貴化し,タイプBの電位領域に漸近した.これは内層酸化皮膜の腐食抑制作用が時間と共に促進されるためと考えられた.したがって,インヒビターの作用は表面酸化物皮膜を安定化することと結論した.
ノート
  • 宮 一普
    2012 年 61 巻 11 号 p. 438-442
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/04/26
    ジャーナル フリー
    冷凍空調機器の銅管に発生する局部腐食に,蟻の巣状腐食がある.原因物質はギ酸や酢酸などの有機酸である.冷凍空調機器の熱交換器および配管に関しては,リン脱酸銅が一般に使用される.このため,リン脱酸銅により蟻の巣状腐食の研究が行われてきた.わずかな例の無酸素銅で行った試験結果があり,リン脱酸銅とは腐食速度が異なっていた.本報告では蟻の巣状腐食に対する耐食性を,リン脱酸銅と無酸素銅で比較した.リン脱酸銅と無酸素銅の耐食性を比較した結果,無酸素銅の腐食速度が遅いことがわかった.リン脱酸銅の腐食断面をEPMA分析した結果,Pが酸化していることがわかった.Pは酸化することでHを生成する(例:P+4H2O→H2PO4+6H+5e).したがって,Pを含有するリン脱酸銅は腐食孔内のpHが低くなりやすい.蟻の巣状腐食は,酸化皮膜(亜酸化銅)の破壊箇所で成長する.pHが低くなれば,亜酸化銅が溶解して,腐食速度が速くなる.このため,リン脱酸銅の蟻の巣状腐食は成長が速いと考えられる.無酸素銅は,pHがリン脱酸銅ほど簡単に低くなることができないので成長速度が遅くなると考えられる.
論文
  • 本間 朗, 佐藤 芳幸, 原 基
    2012 年 61 巻 11 号 p. 443-449
    発行日: 2012/11/15
    公開日: 2013/04/26
    ジャーナル フリー
    BaO2塩中におけるSS400鋼およびSUS304鋼の高温腐食挙動が質量減量の測定および腐食形態の観察,腐食生成物の分析により調べられた.固体BaO2は723 Kで溶融し,1073 K以上の高温域で酸素ガスと固相のBaOに解離することから,このような環境変化に伴う腐食挙動の変化がとくに注目された.973 K以下の溶融BaO2中おいて,SS400鋼は内層スケールとしてFeOおよびFe3O4から成る酸化物スケールを生成した.一方,同じ環境でSUS304鋼は主にBaFe2O4から成る厚いスケールを生成した.溶融BaO2中では,SUS304鋼は773 Kで腐食減量の極大値を示した.この温度でのSUS304鋼の腐食減量はSS400鋼よりも約9倍大きかった.1073 K以上の固相BaO中では,SS400鋼の腐食速度は温度の上昇と共に著しく増加した.この場合,この鋼はFeOおよびFe3O4から成る内層スケールとBaOとBaFe2O4から成る外層スケールを生成した.一方,この環境でのSUS304鋼の腐食速度はSS400鋼に比べ大きく低下した.このときこの鋼は,内層スケールとしてCr2O3・FeOから成るスケールを含む,薄いスケールを生成した.
feedback
Top