Zairyo-to-Kankyo
Online ISSN : 1881-9664
Print ISSN : 0917-0480
ISSN-L : 0917-0480
論文
酸性電解水に浸漬した純鉄表面の腐食挙動
竹ノ内 敏一
著者情報
キーワード: 酸性電解水, 電解, 遊離塩素,
ジャーナル フリー

2012 年 61 巻 12 号 p. 495-502

詳細
抄録

塩化ナトリウムあるいは硫酸ナトリウムを電解質に用いて電解したアノード水(NaCl酸性電解水,Na2SO4酸性電解水)では,ともに高い酸化還元電位と溶存酸素濃度を示し,前者では遊離塩素も生成する.本研究では,これら酸性電解水の物性値を測定し,酸性電解水とpH(=2.48)が同じ塩酸,硫酸に鉄を浸漬し,その腐食挙動を比較した.腐食挙動については,鉄の腐食速度を求め,浸漬した鉄の外観観察,表面分析を行い,遊離塩素,硫酸イオン,溶存酸素の影響について考察を行った.その結果,NaCl酸性電解水に浸漬した鉄の腐食速度は,同じpHの塩酸でのそれに比べて3.5倍大きく,Na2SO4酸性電解水においては3.4倍大きいことが示された.NaCl酸性電解水では,遊離塩素は鉄の腐食速度を高め,鉄の表面の粗化を促進することがわかった.Na2SO4酸性電解水においては,溶存酸素は鉄を腐食する要因であるが,溶存酸素以外にも鉄の腐食を促進する要因があると推測された.さらに,大気中で熱酸化皮膜を形成した鉄をNaCl,あるいはNa2SO4酸性電解水に浸漬すると,熱酸化皮膜は下地鉄とともに溶解され,その表面は,塩酸を用いて処理された場合のそれと同様に,自然酸化皮膜を有する鉄表面と同じであった.酸性電解水は従来用いられてきた塩酸や硫酸に替わり,鉄のエッチングや前処理に利用できる可能性が示唆された.

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 腐食防食学会
前の記事
feedback
Top