抄録
屋外の電気通信用設備に用いられる金属製設備材料の寿命は,全面腐食と見なせる場合には腐食速度から想定することが出来る.腐食速度は,材料の置かれた地域における気象因子や大気汚染因子により異なるが,同一地域であっても雨がかりの有無によって異なる.今回,鉄および亜鉛について雨がかりの有無による腐食速度の違いの評価を試みるべく,沖縄県名護市にFe/Agガルバニック対およびZn/Agガルバニック対の2種のACMセンサーを設置し,それぞれ雨がかりの有無によるセンサー出力の違いについて調べた.直接雨がかりのある面に設置したFe/Ag対ACMセンサーは雨がかりのない面に比して降雨後すぐに応答し,その後も安定的な出力を示した.安定的な水膜の形成の時期が腐食速度の評価に大きく影響することが窺われる.なお,既存の式を用いて得られた雨がかりのない面における腐食速度は0.09 mm/yearとなり,沖縄県西原町におけるシェルタ試験での報告値と同等であった.Zn/Ag対ACMセンサーでは,雨がかりの有無により積算電気量の時間変化は全く異なる傾向を示した.特に雨がかりのある場合,Zn/Ag対ACMセンサーの出力は経過日数とともに低下する傾向があり,直接,腐食速度の評価に結びつけることが困難であった.