抄録
本研究は,Ca(OH)2,NaOH溶液中において,定電流カソード水素チャージ下で侵入水素量測定,電気化学的水素透過試験を実施することにより,API-X65の水素侵入挙動に及ぼす電析Ca皮膜の影響を明らかにすることを目的とした.その結果,電析皮膜を生成しないNaOH溶液中に比べ,電析Ca皮膜を生成するCa(OH)2溶液中でカソード水素チャージを実施した場合の方が侵入水素量が多くなった.また,電気化学的水素透過法により,電析Ca皮膜が生成しない箇所(反応部)での水素侵入効率を測定した.電析Ca皮膜の被覆率が0~40%までは,反応部での水素侵入効率が上昇し,水素侵入を促進することを明らかにした.電析Ca皮膜の被覆率が40%以上になると,反応部での水素侵入効率が低下し,水素侵入を抑制することを明らかにした.