Zairyo-to-Kankyo
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論文
すきま内における腐食領域の幾何学的特徴
松橋 亮野瀬 清美松岡 和巳梶村 治彦
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2016 年 65 巻 7 号 p. 307-312

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抄録

金属/ガラスすきま構造を有するSUS304を人工海水中において定電位電解試験をおこなった.試験中すきま腐食の進展状況をリアルタイムで観察し,腐食起点から時間とともに成長・拡大してゆく腐食部分の二次元的広がりを独自に定義したすきま腐食形態パラメータにより定量化した.得られた結果を以下に示す.
1)腐食起点はいずれの電位でも約20μmの深さであった.一方,最大すきま腐食深さは縁下付近に位置し,貴な電位ほど深くなる.また,すきま内の腐食部分の腐食深さはいずれの電位においても約5μmを超えなかった.これらのことから,腐食部分の広がりは主として,すきま内の不動態皮膜と腐食部分との界面で起きており,暗灰色に見える腐食部分は金属が溶解したあとに残存した腐食生成物であると考えられた.
2)腐食部分の形状は,すきま腐食発生起点から,最初は見かけ上円形であり,時間経過とともに疑似楕円形に偏心する.この偏心傾向は,貴な電位ほど,また腐食が進み腐食先端部がすきまの縁下に近づくほど大きくなる.
3)腐食起点を焦点として,疑似楕円形状の長径aは,縁下方向成分aedgeとすきま中心方向成分ampとに分けられる.aedgeは貴な電位ほど,また縁下に近づくほど指数関数的大きくなるが,ampは時間に対してわずかながら小さくなり電位依存性は小さい.
4)腐食先端部の移動速度は,その先端位置がすきまの縁下に近いほど大きくなる.これは,移動速度がすきま内腐食先端位置の電位により決定され,その結果電流が縁下に近いほど大きくなるためと考えられた.

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© 2016 公益社団法人 腐食防食学会
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