使用済み燃料プール(SFP)の冷却不全または冷却水損失による重大事故が発生した場合,使用済み燃料被覆管は空気中に露出し,崩壊熱による温度上昇が起こる.そのため空気中での燃料被覆管の高温酸化の研究を行うことがSFPの安全性評価のために重要である.本研究では,燃料被覆管材料であるジルカロイ2(Zry2)およびジルカロイ4(Zry4)を用いて,温度及び空気の流量を変化させた条件における熱天秤による酸化試験を行った.熱天秤の試験では試験温度の上昇に伴い酸化速度が上昇する傾向が見られた.また,空気の流量を使用済み燃料ラック内でSFP事故時に想定される範囲で変化させた場合は,Zry2では950℃以下,Zry4では1050℃以下において,明らかな流量の酸化速度への影響は見られなかった.一方,それ以上の温度では,いずれの合金においても流量に依存して酸化速度が速くなる傾向が見られた.また,その傾向は温度が高いほど顕著に現れた.
空気中における酸化過程の詳細検討のため,酸化試験後,酸化層の詳細観察を行い,重量変化データとの比較を行った.その結果,重量変化は表面酸化膜の割れ以前の過程では,試料表面での緻密な酸化膜の成長に依存し,表面酸化膜の割れ以降の過程では,酸化膜の割れの下層での多孔質な酸化層の成長に依存することが明らかになった.