加速試験法検討の一環としてBWR一次冷却水系での応力腐食割れ発生挙動に及ぼす硫酸塩の影響を調べるために,288℃の硫酸ナトリウム水溶液中で鋭敏化304ステンレス鋼試験片のすきま付き曲げ試験(CBB試験)を行った.30~500 ppbのSO42−添加は,深さ1 μm以上の全き裂発生数,および深さ50 μm以上の進展性き裂発生数の両者を増加させた.SO42−濃度100 ppb以下では,他の多くの観測例と同様,応力腐食き裂発生の空間分布がPoisson分布に適合したが,300 ppb以上では不適合であった.き裂発生の累積確率の新たな推定方法としてPoisson分布近似法が提示され,その有効性が確認された.Poisson確率過程モデルに基づく解析により,き裂発生寿命分布下界値aestのSO42−濃度依存性として,aest=683/[SO42−]が推定された.例えば,40 ppbのSO42−添加により,き裂発生の確率的性格を変えずにき裂発生寿命分布下界値を10分の1に短縮することができる.硫酸塩添加によるaestの短縮は,電気伝導率ではなく,SO42−そのものに依存する事象と考えられた.