定電流電解の一種にカソード還元法と呼ばれる電気化学測定法がある.銅の酸化物および硫化物皮膜厚さを測定するためにカソード還元法を適用した.市販の酸化銅,亜酸化銅,硫化銅の粉末試薬を−1mA/cm2の定電流でカソード還元すると,電位-時間曲線に電位が一定となるプラトーが現れた.酸化銅,亜酸化銅,硫化銅のプラトー電位はそれぞれ−0.7,−0.8,−1.15Vであった.1000ppm NaClおよび1000ppm Na2S溶液に浸漬した銅板上に形成された皮膜をカソード還元法により定性・定量分析した.カソード還元曲線から,NaCl溶液中で形成された皮膜の主成分は亜酸化銅であり,Na2S溶液中で形成された皮膜の主成分は硫化銅であることが判明した.断面観察から求めた皮膜厚さとカソード還元から求めた皮膜厚さは比較的よく一致した.