2018 年 67 巻 2 号 p. 78-82
本研究では,アルカリ性を付与する高炉スラグ混合セメントと鉄筋コンクリートの防錆処理工法で実績のある亜硝酸塩の組み合わせに着目し,これらの組成物が鉄の防錆に与える影響とメカニズムを検証した.
アルカリ粉体と亜硝酸塩の鉄への影響を観察するため,これらの添加物を加えた水溶液中にモデルサンプルとして,鉄プレートを浸漬し,調査した.14日間浸漬した鉄プレート表面のXPS分析の結果,酸素のエネルギー状態から,亜硝酸塩を含むサンプルで,鉄表面に亜硝酸イオンと考えられる吸着酸素が多く存在していることが分かった.また鉄のエネルギー状態からも亜硝酸塩を含むサンプルのみピークが著しく低くなっていることから,鉄表面への亜硝酸イオンの吸着が示唆された.また,実鋼板サンプルを使用した試験では,亜硝酸塩を含む下塗り塗膜と鋼板との界面に,鉄と酸素を主成分とする中間層が確認できた.