2019 年 68 巻 10 号 p. 274-279
世界気象機構(WMO)によると,現在の水の消費量は50年前の約3倍になっていると言われている.そのため,2025年までに世界の人口の3分の2にあたる人々が飲み水の確保さえ難しくなると危惧されている.コンクリート分野では年間数十億トンの淡水を消費しているものの,現状では海水の使用は極めて少ない.淡水使用を少しでも減らすために積極的な海水の使用が求められていると言える.この現状を踏まえ,(公社)日本コンクリート工学会は,平成24年度・25年度の2ヵ年の委員会活動を実施して,海水の適用に関する知見を収集しその問題点と改善策を提示した.本稿では,その活動の概要を紹介する.さらに,九州大学においても海水使用コンクリートの基礎的性状に関する実験的検討を行っており,本稿では,そこで得られているデータを示し,コンクリートの海水練混ぜに関する技術の現状およびその可能性について言及する.
なお,本稿は2018年10月に富山市において開催された第65回材料と環境討論会において,著者3名(濵田,パタ,ハラハップ)が発表した内容をコンパクト化して取り纏めたものである.