2019 年 68 巻 11 号 p. 303-308
本研究ではプローブ電極の2点周波数インピーダンス測定により,コンクリート中の鉄筋の脱不働態化に対する塩化物イオン濃度とpHの関係を検討した.コンクリート細孔内模擬水溶液として,電解液には飽和水酸化カルシウム水溶液を使用した.異なる塩化物イオン濃度に調製した飽和水酸化カルシウム水溶液中に鉄筋を模擬した一対のプローブ電極を浸漬させて2点周波数インピーダンス測定をおこなった.測定中は,中性化を模擬するためにポンプにより電解液に空気を送り込んだ.2点周波数インピーダンス測定から見積もられるプローブ電極/溶液界面の電荷移動抵抗Rctと電解液のpHのモニタリングから,pHの低下とともにRctの急激な低下が確認できた.このRctの急激な低下は電極表面における脱不働態化に起因したものと考えられる.様々な塩化物イオン濃度の電解液中における2点周波数インピーダンス測定から得られたRctと電解液のpHのモニタリング結果から,鉄筋の状態を“不働態”,“脱不働態化”,“腐食”に分類し,これらの結果を電解液の塩化物イオン濃度とpHから構成される二次元図に対してプロットした.この図から,鉄筋の脱不働態化に対する塩化物イオン濃度とpHの条件を議論した.