本研究ではプローブ電極の2点周波数インピーダンス測定により,コンクリート中の鉄筋の脱不働態化に対する塩化物イオン濃度とpHの関係を検討した.コンクリート細孔内模擬水溶液として,電解液には飽和水酸化カルシウム水溶液を使用した.異なる塩化物イオン濃度に調製した飽和水酸化カルシウム水溶液中に鉄筋を模擬した一対のプローブ電極を浸漬させて2点周波数インピーダンス測定をおこなった.測定中は,中性化を模擬するためにポンプにより電解液に空気を送り込んだ.2点周波数インピーダンス測定から見積もられるプローブ電極/溶液界面の電荷移動抵抗Rctと電解液のpHのモニタリングから,pHの低下とともにRctの急激な低下が確認できた.このRctの急激な低下は電極表面における脱不働態化に起因したものと考えられる.様々な塩化物イオン濃度の電解液中における2点周波数インピーダンス測定から得られたRctと電解液のpHのモニタリング結果から,鉄筋の状態を“不働態”,“脱不働態化”,“腐食”に分類し,これらの結果を電解液の塩化物イオン濃度とpHから構成される二次元図に対してプロットした.この図から,鉄筋の脱不働態化に対する塩化物イオン濃度とpHの条件を議論した.
著者らは,公益社団法人腐食防食学会(JSCE)が,一般財団法人JCCP国際石油・ガス協力機関から受託したプロジェクト「石油関連コンクリート施設への海水の有効利用及び維持管理に関する支援化確認事業(クウェート)」に参加し,クウェート科学研究所(KISR)への研究支援活動を行った.本稿では,上記の活動の一環として実施した海水練りコンクリートの基礎検討について報告する.
本報では大気開放0.5 M Na2SO4中におけるFe腐食に有効な陽イオンの沈殿インヒビターについて,硬いおよび軟らかい酸塩基の法則(HSAB則)に基づいて検討する.多価の金属陽イオンが安定な硬い酸と硬い塩基の作用によって容易に水酸化物の沈殿を生成する.この沈殿皮膜はカソード反応,溶存酸素の還元反応を抑制するが,アノード反応,Feの溶解反応を促進する.アノード反応を抑制する陰イオンの沈殿インヒビターの添加によって高い抑制効果が得られる.一方,3価のセリウムイオンCe3+はH2発生を伴った酸化物層の直接生成によってカソードおよびアノード両反応を抑制する.
飛来塩分量の空間分布予測に向けた基礎資料として,島根県内において同じ期間に広域な飛来塩分調査を実施し,海塩由来の飛来塩分量の飛来特性を把握した.また,著者らが提案する気象観測データを用いた風力エネルギー係数と飛来塩分の観測値の関係を議論し,気象観測データより飛来塩分量が予測可能か検討を行う.
通信のために地下に多くの設備が存在するが,鋼管においては内面の腐食による劣化が懸念される.本稿においては,実環境に近いと想定されるマンホールに鋼管から作成した供試体を設置し,4年間に亘り重量減少量を検査することで腐食速度を実測した.その後供試体に対しSEMによる観察およびX線回折を確認するとFeOOH,Fe3O4,Fe(OH)2CO3から成る緻密層が存在した.ここから腐食速度は時間の1/2乗に比例しうると考え,モデル式の係数を確認した.