材料と環境
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論文
ボルタンメトリーによる黄銅を含む銅材料の腐食生成物の成長機構の解析
中山 茂吉富永 愛子藤岡 寛之能登谷 武紀大堺 利行
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2020 年 69 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

純銅表面の腐食生成物を定性的かつ定量的に評価できるボルタンメトリー還元測定法を,黄銅の分析に応用展開した.ボルタンメトリー測定の際の電解液は高アルカリ液(6 M KOH+1 M LiOH)である.十分腐食した黄銅の計測過程で,銅酸化物(Cu2OとCuO)に加えて亜鉛酸化物(ZnO)の還元波を検出すると共に,本計測法を黄銅表面の腐食生成物の定量的な評価に適用できることを確認した.脱亜鉛腐食の解析を念頭に置いて,各種濃度のNaCl水溶液中に浸漬させた黄銅板の評価を行った.NaClの濃度が0.1%以下では,Cu2Oの選択的な生成・成長を確認した.濃度が1%を超えると挙動が変わり,Cu2Oが生成しにくくなると共に,新たにZnOが生成した.最表面への亜鉛の拡散速度やCu2OとZnOの生成機構の違いにより,NaCl濃度に対する挙動に差異が生じたものと考えられる.

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© 2020 公益社団法人 腐食防食学会
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