2020 年 69 巻 1 号 p. 17-25
本研究では,濃縮された冷却水中における銅配管の局部的な腐食における堆積物の影響について検討を行った.銅配管の局部的な腐食は,銅配管内面に存在しているカーボン皮膜の健全部がカソード,カーボン皮膜の欠陥部がアノードとなり発生していると考えられた.銅配管の腐食は,カーボン皮膜の欠陥部への堆積物の存在により影響を受けており,特に,鉄錆が堆積物である場合において,アノード反応が非常に促進されることがわかった.アノード反応が促進される要因は,鉄錆の堆積により銅配管表面の酸化皮膜形成が阻害されていることが考えられ,その一因として鉄錆下のpHが低いことが考えられる.また,予め銅配管表面に安定な酸化皮膜を形成させることにより,鉄錆の堆積による腐食促進を抑制できる可能性が示唆された.