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技術資料
わが国における腐食コスト
腐食コスト調査委員会
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2020 年 69 巻 11 号 p. 283-306

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抄録

2015年における日本の腐食コスト調査を行ない,1974年および1997年の結果と比較した.3つの経済状況(成長期:1974年,変換期:1997年,成熟期:2015年)での調査は世界初である.2015年のUhlig方式での総額は4兆3千億円になり,GNIの0.78%であった.この総額は前回(1997年)の結果4兆6千億円の0.94倍,1974年の結果2兆5千億円の1.68倍となった.2015年と1997年の総額がほぼ等しいことから,それらは成熟期での直接的な腐食対策費およびその割合を示していると言える.腐食対策費の対GNI比は0.7~0.8%となる.Hoar方式での腐食対策費総額はおおよそ6兆6千億円でGNIの1.27%であり,この総額は,1997年(5兆2千億円)の1.27倍,1974年(1兆1千億円)の6.22倍であった.Uhlig方式では初期コストが中心に積算されるのに対して,Hoar方式ではメンテナンス費も積算対象となる.Hoar/Uhlig-比は1.13(1997年)から1.53(2015年)に増えている.これは,腐食対策でメンテナンスがより重要となっていることを示している.2015年の腐食コストは1997年のそれとはほとんど同じであるが,新技術を使うことで腐食コストパフォーマンスは前回(1997年)から今回(2015年)にかけて向上している.新技術―モニタリング,シミュレーション,データベース,AI,Risk Based Maintenance,など―は腐食対策レベル向上に効果があり,腐食コストを低減させる.

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© 2020 公益社団法人 腐食防食学会
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