2011年3月11日,日本の東北地方の太平洋岸でマグニチュード9.0の壊滅的な地震が発生した.これに伴う津波により福島第一原子力発電所の核燃料冷却機能が失われ,炉心溶融に至った.これが福島第一事故の概要である.燃料冷却のための非常措置として,原子炉及び使用済燃料プールに海水が注入された結果,機器の腐食に関する様々な課題が生じた.本稿では,まず事故直後に顕在化した腐食の課題と対策活動について説明する.ここでは,原子炉及び使用済燃料プールへの適用が検討された様々な腐食抑制手法とその選定過程,適用時期,適用した結果について詳述している.事故の収束後,福島第一原子力発電所の廃炉作業が4つの技術課題(使用済燃料プールからの燃料取り出し/燃料デブリ取り出し/汚染水対策/廃棄物対策)に基づいて進められている.本稿では,これらの技術課題の解決にあたって顕在化した腐食の課題,及び将来起こり得る潜在的な腐食の課題についても概説する.