東京電力福島第一原子力発電所(1F)の事故後の腐食対策としてヒドラジン(N2H4)の添加が実施された.N2H4は高温では化学的に脱酸素を起こすが,常温ではその反応が遅くなることが知られていた.しかしながら,γ線照射がこの脱酸素反応を促進する可能性があった.そこで,N2H4を含む溶液でのγ線照射試験を実施し,γ線照射により,N2H4を添加した純水並びに人工海水の双方で溶存酸素濃度が減少することを明らにした.またその結果はγ線のラジオリシス計算からも確認した.これらのデータは,1Fの防食対策に対して科学的な根拠を与えることとなった.