材料と環境
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総合論文
気液界面模擬環境における炭素鋼の腐食メカニズム
大谷 恭平加藤 千明
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2021 年 70 巻 12 号 p. 480-486

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抄録

気液交番環境における炭素鋼の腐食について検討してきた結果の総合論文である.

気液交番環境で液膜に覆われる炭素鋼の表面に形成した鉄さび層の断面観察および分析より,気液交番環境で炭素鋼には外側から赤さび層(γ-FeOOH),クラスト層(Fe3O4),内部結晶(Fe3O4),内部鉄さび層から成る多層の鉄さび層が形成することを見出した.この多層構造の鉄さび層および液膜に起因して酸素還元反応は常時水中に浸漬された場合よりも加速された状態を維持していたため,炭素鋼の腐食速度は増大したと考えられる.

気液交番環境における炭素鋼の腐食速度に及ぼす海水成分の影響の調査より,純水から200倍希釈人工海水までの薄い濃度領域では人工海水濃度の増大に伴って腐食速度は加速し,20倍希釈から無希釈人工海水までの濃い濃度領域では濃度の増大に伴って腐食速度は減少することを見出した.人工海水に含まれるMgやCaイオンが反応界面に析出して表面を覆うことで酸素還元反応が抑制されたため,濃度の高い人工海水中で炭素鋼の腐食が抑制されたと考えられる.

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© 2021 公益社団法人 腐食防食学会
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