2022 年 71 巻 5 号 p. 133-137
薄い液膜下における鋼の腐食に及ぼす腐食抑制剤(以下「抑制剤」と略記する)の影響を調査した.抑制剤として0.5 mmol L-1モリブデン酸ナトリウムと0.5 mmol L-1乳酸アルミニウムを10 mmol L-1 NaCl溶液に添加して用いた.サイフォン式膜厚制御セルを用いて試料上に1.0~0.2 mmの厚さの液膜を形成し電気化学測定を実施した.動電位分極測定では,拡散限界電流(jlim)及びアノード電流(janode)を測定し,抑制剤添加による変化を調べた.抑制剤添加によるjlimの変化は見られなかったが,janodeは減少したことから用いた抑制剤はアノード反応を抑制することが示された.また,電気化学インピーダンス測定では,溶液に試料を完全に浸漬させた場合と比較して,液膜下においてインピーダンスの挙動が異なることから,液量に応じて抑制剤の保護層の形態が変化することが示唆された.