2026 年 75 巻 1 号 p. 3-13
トライボロジーと腐食工学はともに表面の損傷を扱う工学分野である.本稿ではトライボロジーの分野を占める潤滑剤について,市場規模,商品構成などを紹介した.また,潤滑剤は,基油に添加剤を加え,様々な性能が付加される.潤滑剤が摩擦・摩耗の制御,冷却,腐食の抑制,汚れの除去と分散,密封作用,衝撃緩和そして力の伝達作用を発揮することを,エンジンオイルを中心に説明した.基油は精製するほど不純物が取り除かれる.基油の純度が上がるほどそれに添加される添加剤は効果を発揮しやすくなる.この現象は添加剤の基油中での溶解状態からもたらされることを,文献の知見を基に説明した.
一方粘度や外観は油系製品と同様であるが,水溶性成分で構成される水・グリコール作動液がある.その実際に起きた腐食事例に対しては,上述の潤滑油からのアプローチとは異なる技術を用いる必要があった.腐食工学の知見を利用し,原因と対策の検討が行われた.脱不動態化pH,およびすきま再不動態化電位概念を用いることにより,塩化物濃度を10 ppm以下に管理することで不動態が維持され腐食を防止できることを明らかにした.
不動態の形成は,油系の潤滑油でもおきていると考えられ,詳細な解明が待たれる.また,水グリコール作動液にも,塩化物濃度の使用限界値を上げる卑近の課題がある.今後の技術進展については次回述べる.