抄録
直線分極法や電気化学インピーダンス法 (EIS) とは異なり, 電気化学ノイズ法 (ENM) は電極の分極抵抗 (Rp) を, 電流の印加による電気化学的外乱の無い条件下において測定をおこなえる. しかしながら, 直線分極による場合と同じく, 電気化学ノイズ法で測定されたRpは, 電極間の溶液抵抗 (Rs) の影響を受ける. これは, 低伝導度溶液中で測定されたRpに大きな誤差をもたらす可能性があるにもかかわらず, Rpに対するRsの効果はほとんど検討されていない. 本研究では, 希薄な塩酸水溶液中での炭素鋼電極のRpを, 同じ条件下において, ENMとEISの両方を用いて測定した. ENMによるRpの誤差をEISでのRpと比較することにより評価した. 後者はRsの影響を受けないと考えられる. ENMによるRpはEISよりも大きく, 両者の差は溶液の濃度とともに低下した. しかしながら, 差の度合いはEISで測定されたRsよりも小さかった. この利点は実験に用いた独特な電極配置によってもたらされたと推察される.