材料と環境
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SUS304鋼板の応力腐食割れの電位ノイズおよびアコースティック・エミッション解析
藤本 慎也竹本 幹男
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2004 年 53 巻 6 号 p. 309-316

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抄録
タイプ304オーステナイト系ステンレス鋼薄板の38%MgCl2溶液中における粒界 (IG) SCCと粒内 (TG) SCC中の電位ノイズ (PN) とAEを解析した. AEとPNは粒界型SCCでは検出されたが, 粒内型SCCでは電位ノイズのみが検出された.
熱応力と引張り負荷応力の組合せ応力でのSCC試験では, 孔食, 隙間腐食, 孔食経由のIG-SCCがおこった. これらの腐食損傷は, 特徴のある電位ノイズを発生した. 実験初期 (ゾーンI) における孔食に伴うRD-タイプ (卑電位への急速シフト) に加えて, 中期 (ゾーンII) にはRRタイプ (貴電位への急速シフト) が検出された. 高速粒界割れに伴うAEは, 振幅が小さく周波数成分の低い (<0.07Hz) RDタイプの電位ノイズが検出されるときに検出された. ゾーンIIIにおけるAEとPNのタイミングは2タイプに分類された. AEのすぐあとに検出されるRDタイプの電位シフトは, 新生粒界のアノード電流を示唆し, AEのすぐ前に観察されるRDタイプの電位シフトは孔食底からのIG割れによるものと考えられた.
TG-SCCはAEを発生しないが, 周波数成分が0.016Hz以下のRDタイプの電位ノイズを発生させる. TG-SCCの電位シフト速度 (0.08mV/s) は, IG-SCCのそれ (1.4mV/s) の6%であった.
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© 社団法人腐食防食協会
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