抄録
凍結防止剤により引き起こされる耐候性鋼製橋梁の著しい腐食を防止するため, 日本道路公団 四国支社 (JH四国) では2つの実橋梁桁を用い, 水洗試験を3年間行った. 水洗は毎年, 凍結防止剤散布期間が終了した4月に, 2種類の水量・水圧3l/min (2MPa時), 5.5l/min (4MPa時) を用いて行った. さび層のキャラクタリゼーションは前報と同様に行い, 水洗された部分と水洗しない部分とを比較した. 水洗後, さび層中の可溶性塩化物イオン濃度は, 冬期のピークのほぼ半分に減少した. 水洗部のさび層厚および単位面積当たりさび採取量の増加は水洗しない部分に比べ, 試験期間中, 常に抑制された. 水洗されたさび層下の鋼の腐食減量も非水洗部に比べて低くなった. 塩化物イオン濃度の低い水洗部に形成されたさび粒子の比表面積は, 高濃度の残留塩化物イオンによってさび粒子成長の起きやすい夏期においても高く保たれた.
これらのことから, 水洗はさび粒子中の塩化物イオンによって起きるさび粒子サイズの成長を抑制することによってさび層の保護性を維持することが示唆された. 凍結防止剤による腐食対策としての定期的な水洗は, 耐候性鋼橋梁の維持管理上有効である.