2025 年 8 巻 p. 91-170
矯正研究室では、令和6(2024)年度における「効果的な矯正処遇に資する刑務官の実践知に関する研究」の一環として、同年7月から10月にかけ、元刑務所長である熊谷竹生氏、木下登志美氏及び有光秀晴氏の3名に対してインタビュー調査を行った。
上記3名の方々については、刑務所の現場で刑務官として長年勤務し、受刑者処遇に関する知識・経験が豊富な方々の中から、地域、年齢及び性別等のバランスを考慮して候補者を選定し、協力を依頼したものである。インタビューは、事前に研究目的、具体的な研究方法等を書面及び口頭で協力者に説明し、その同意を得た上で、当協会会議室において対面で実施した。当研究室において、インタビュー中のすべての発言を録音し、それを文字に起こして逐語録を作成した。その逐語録に基づき、インタビュー記録を取りまとめた。その過程で、記録内容にふさわしい表題及び小見出しを設けるとともに、必要に応じ脚注を付した。表題等を含め、インタビュー記録の全内容については、紀要への掲載に当たり、事前に各協力者に確認いただいた。
本記録は、サブタイトルに記したとおり、「刑務官のオーラル・ヒストリー」である。当研究室ではこれまで、元少年院長、元少年鑑別所長等にインタビュー調査を行い、それらの記録をオーラル・ヒストリーとして『矯正研究』第6号及び第7号に掲載してきた。今回も、それらに引き続き、元職員の方々に御自身の勤務歴を振り返って様々な経験や時々の思いを語っていただきながら、歴史に埋もれつつあるかつての矯正運営の実状をできる限り聴取して記録するという研究方針の下に行ったものである。
3氏からは、具体的に、刑務官として採用されるに至った経緯、新人刑務官時代に抱いていた思い、その後、中堅幹部を経て施設長となり、様々な難しい状況に対応・奮闘してきた様子が語られた。そこからは、一人の刑務官としての誕生、成長、引退までの軌跡を読み取ることができる。同時に、3氏の語りでは、その時々に遭遇した事案の背景事情等を説明する中で、個々人の経歴を超えた、我が国における刑事施設運営の発展の過程、つまりは、成人矯正の生きた歴史にしばしば話が及んでいる。その面でも、貴重な証言記録となっていると思われる。