矯正研究
Online ISSN : 2760-8921
Print ISSN : 2433-8761
最新号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • その特質と変化
    伊藤 茂樹
    2025 年8 巻 p. 1-15
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

     矯正界では矯正教育の現状やあるべき姿について長く議論されてきたのと裏腹に、その担い手である法務教官についての議論が十分になされてきたとは言えない。彼らが「どうあるべきか」に関する議論も、事実として「どうであるか」、基本的な特性や実情について確認したうえで行う必要があり、本稿ではそれを基礎づけることを試みる。

     法務教官という職業は、法律などによって高度に制度化されたものであり、それによって職務や環境はかなりの程度規定される。教育と保安の両方を行うこと、多様なバックグラウンドを持った職員を独自に養成すること、対象である少年と全人的な関わりをする一方、処遇には厳しく「縛り」がかけられ、恣意的に少年の生殺与奪を握るような状況は回避されていることが特徴的である。こうした特徴を背景に法務教官は、公私の境が曖昧化するほど献身的に職務を遂行してきたが、それは強い同僚性によって可能になってきたほか、ジェンダー化された処遇が行われてきた。

     近年の矯正政策は人権尊重やコンプライアンスを徹底しつつ標準化が進み、少年院の収容減も背景に法務教官が刑事施設で勤務することが増えるなど環境が変わりつつある。これらは従来の法務教官のアイデンティティや「専門性」を変える可能性があるが、変化する環境により柔軟に対応していく必要があると思われる。

  • 矯正との関わりと今後の展望
    青木 治
    2025 年8 巻 p. 312-315
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 舩山 健二
    2025 年8 巻 p. 316-321
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • 考察結果から考える刑務官の在り方
    竹中 樹
    2025 年8 巻 p. 16-37
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
     令和7年6月から明治以来の懲役刑が拘禁刑に変わる。これに伴い刑事施設も矯正施設として矯正的な風土をより醸成することが求められることとなる。そのためには、刑事施設において動的保安の比重を高める必要がある。しかし、動的保安については、言葉としては新しい概念であり、その正確な意味が知られていないので、職員がその必要性について懐疑的になる可能性もあるし、被収容者との良好な人間関係を結ぶというところについては、被収容者に籠絡される危険はないのかなどについて疑問もあるかもしれない。そこで、動的保安の実施について、その必要性、職員と被収容者との良好な人間関係などを説明してその実施への職員の懸念を解消し、次に動的保安の正しい理解のために被収容者との距離の取り方を含めて動的保安の効果的実施方法について、動的保安の研究が進んでいる外国の文献を参考に具体的に説明し、そこで得られた理解を基に、最後に動的保安を実施するに当たって問われる我々の刑務官としての在り方を考察する。
  • 性差を踏まえた傾向スコアマッチングによる検討
    中村 康, 佐々木 彩子
    2025 年8 巻 p. 38-60
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
     受刑者や出所者における無職率は高く、出所後の就労確保は再犯防止に向けての重要な課題であり、第二次再犯防止推進計画においては、「就労・住居の確保等」が重点課題の一つに掲げられ、その具体的施策の中には、「刑事施設における職業訓練の充実」が盛り込まれている。受刑中の職業訓練は、受刑者の就労率向上に資する重要な介入策の一つであると考えられるものの、それが実際に出所後の就労に結び付いているか否かについての科学的な検証は十分になされていない。そこで、本研究においては、職業訓練の実施状況や希望者、そして実施に至った者の特徴を明らかにするとともに、傾向スコアマッチングを用い、職業訓練の実施に至った者と至らなかった者との比較分析を行った。分析の結果、職業訓練の実施状況については希望率、実施率、保護観察終了時点での有職率などに男女別で違いがあり、職業訓練や就労を巡る状況は性別によって異なっていることが示唆された。特に、女性受刑者においては、職業訓練を実施すること自体に就労促進効果があるのに対し、男性受刑者においては職業訓練と就労支援指導を併用することで有職率が一層促進される可能性が認められた。こうした性差に対応した効果的な職業訓練の在り方について考察を行った。
  • 刑務官の実践知に関する試論
    仲野 由佳理
    2025 年8 巻 p. 61-90
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本稿は、現役の刑務官7名へのインタビューに基づき工場における指導・処遇技術の言語化を目指した。その結果「工場管理のストラテジー」として、①法律・制度を熟知し、執行する(「法律・制度を熟知」「危険予知」「施設特性への理解」「受刑者の二面性に対する理解」)、②「役者になる」・信頼関係の構築、③「訓示」と「工場のカラー」(「訓示の活用」「工場文化の多様性」)、④「親父」が象徴する情緒的関係を明らかにした。これらは組織力が持つ機能(「駆け引き」「籠絡の危機への対処」「心的負担の軽減」)によって達成される側面があることがわかった。
  • 刑務官のオーラル・ヒストリー
    木村 敦
    2025 年8 巻 p. 91-170
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

     矯正研究室では、令和6(2024)年度における「効果的な矯正処遇に資する刑務官の実践知に関する研究」の一環として、同年7月から10月にかけ、元刑務所長である熊谷竹生氏、木下登志美氏及び有光秀晴氏の3名に対してインタビュー調査を行った。

     上記3名の方々については、刑務所の現場で刑務官として長年勤務し、受刑者処遇に関する知識・経験が豊富な方々の中から、地域、年齢及び性別等のバランスを考慮して候補者を選定し、協力を依頼したものである。インタビューは、事前に研究目的、具体的な研究方法等を書面及び口頭で協力者に説明し、その同意を得た上で、当協会会議室において対面で実施した。当研究室において、インタビュー中のすべての発言を録音し、それを文字に起こして逐語録を作成した。その逐語録に基づき、インタビュー記録を取りまとめた。その過程で、記録内容にふさわしい表題及び小見出しを設けるとともに、必要に応じ脚注を付した。表題等を含め、インタビュー記録の全内容については、紀要への掲載に当たり、事前に各協力者に確認いただいた。

     本記録は、サブタイトルに記したとおり、「刑務官のオーラル・ヒストリー」である。当研究室ではこれまで、元少年院長、元少年鑑別所長等にインタビュー調査を行い、それらの記録をオーラル・ヒストリーとして『矯正研究』第6号及び第7号に掲載してきた。今回も、それらに引き続き、元職員の方々に御自身の勤務歴を振り返って様々な経験や時々の思いを語っていただきながら、歴史に埋もれつつあるかつての矯正運営の実状をできる限り聴取して記録するという研究方針の下に行ったものである。

     3氏からは、具体的に、刑務官として採用されるに至った経緯、新人刑務官時代に抱いていた思い、その後、中堅幹部を経て施設長となり、様々な難しい状況に対応・奮闘してきた様子が語られた。そこからは、一人の刑務官としての誕生、成長、引退までの軌跡を読み取ることができる。同時に、3氏の語りでは、その時々に遭遇した事案の背景事情等を説明する中で、個々人の経歴を超えた、我が国における刑事施設運営の発展の過程、つまりは、成人矯正の生きた歴史にしばしば話が及んでいる。その面でも、貴重な証言記録となっていると思われる。 

  • 刑務所の工場担当が語る処遇の要諦
    木村 敦
    2025 年8 巻 p. 171-215
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

     矯正研究室では、令和6(2024)年度における「効果的な矯正処遇に資する刑務官の実践知に関する研究」の一環として、同年6月から7月にかけ、4か所の刑事施設において、計7名の現職刑務官に対してインタビュー調査を行った。

     調査研究の実施に当たっては、まず、当研究室において、施設規模、性別及び犯罪的傾向の違い等を考慮して4か所の刑事施設を選定し、各施設に対して当方の研究目的等を説明して、インタビュー協力者の推薦を依頼した。この依頼に当たっては、当該施設において工場担当に配置されて現に勤務されている方、又は、工場担当の勤務経験が豊富な方からお話を聴きたいとの要望を伝えた。その上で、各施設から推薦のあった7名の刑務官の方々に対し、インタビュー調査の協力を依頼したものである。インタビューは、事前に研究目的、具体的な研究方法等を書面及び口頭で協力者に説明し、その同意を得た上で、各協力者の勤務先施設に出向いて対面で実施した。

     なお、3か所の施設においては、各1名の刑務官に対して個別インタビュー形式で、1か所の施設においては、4名の刑務官に対してグループインタビュー形式で実施した。

     当研究室において、インタビュー中のすべての発言を録音し、それを文字に起こして逐語録を作成した。その逐語録に基づき、インタビュー記録を取りまとめた。各記録の小見出し及び脚注は、記録の取りまとめの過程で当研究室において付した。これらを含め、インタビュー記録の全内容について、協力者に確認いただいた。

     上記の経緯により作成した本記録は、次頁以降のとおり、紀要『矯正研究』第8号に全文を掲載するとともに、その一部は、同紀要掲載の仲野由佳理当協会特別研究員による論文「『工場』をめぐる刑務官の指導・処遇技術とは何か」において引用・考察されている。また、このように現職刑務官の語った言葉がそのまま、相応の分量の文字媒体として、(矯正部内の資料ではなく)どなたでも読むことが可能な形で公開されることは、これまであまりなかったことであろう。

     具体的に、各インタビュー協力者からは、刑務官としての悩み・葛藤、職務の困難さなどが語られる一方、仕事に対する使命感や創意工夫、受刑者に対する配慮、それらの具体的な実践が開示された。その語りからは、受け持ち受刑者に対する強い思いも伝わってくる。本年6月からの拘禁刑の実施に伴い、刑事施設においては現在、矯正処遇の一層の充実が喫緊の課題とされている。この課題へのアプローチの一つとして、我が国刑務所の現場最前線で長年にわたり展開されてきた受刑者処遇に立ち返り、その要諦とはどのようなものなのか、改めて吟味してみることは有意義であろう。本記録がその一助になれば幸いである。

  • 厳罰支持、あるいは教育支持の背景
    菅野 哲也, 森 丈弓
    2025 年8 巻 p. 216-251
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本調査において、日本の受刑者処遇に関する一般市民の認識を把握するために、Web調査を行った。回答者(1,000人)のおおむね7割が刑務所内では人権が尊重され人道的な処遇が行われていると認識し、新たに始まる「拘禁刑」制度で教育の機会を拡充することについて8割以上が肯定的に評価する一方で、同様に8割近い回答者が刑罰は軽すぎる、あるいは、刑務所は受刑者に厳しい罰を与えるべきであると回答していた。この一見矛盾する認識の背景を探るためにデータを重回帰分析及びパス解析にかけて分析したところ、回答者の心理の基底にある不安、すなわち、社会の秩序や継続性を危うくする道徳性や規範意識の低下、あるいは社会的絆の欠如に誘発された不安が存在し、これが刑罰の厳しい執行への支持と、教育的な介入への支持双方に結びついた可能性が明らかになった。人間存在の根本的なあり方に関わる不安は「存在論的不安12」と呼ばれ、その解消には社会的環境の秩序と安定性への確信が必要と言われる(澤井,2016,p.138)。「家族制度」、「地域共同体」、「信条・宗教」など、かつて秩序と安定性の維持に機能した伝統が失われつつある現代では、刑法・刑罰という厳然とした枠組みによる秩序の維持と、第三者による教育的介入、あるいは治療的介入による問題行動のコントロールが並行して求められているものと考えられる。
  • 小島 富美子
    2025 年8 巻 p. 252-298
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究では、被害者支援活動の歴史的経緯及び現状について文献調査を行うとともに、矯正施設と被害者支援団体との関わりの現状や今後の課題等について団体スタッフ等に対するインタビュー調査等を行い、今後の適切な連携の在り方等について考察した。

     その結果、被害者支援団体と矯正施設との関わりの現状として、①矯正施設に協力している被害者等の負担感、②被害者等の現状に対する矯正職員の理解、③矯正施設による被害者等への情報伝達、④新たな制度への対応の必要性が課題となっていることが示された。また、今後は、①被害者支援団体と矯正施設との相互理解の促進、②矯正職員の育成とケアの充実、③被害者の潜在的な声への対応が求められる。

  • 「対話」を巡って 
    二ノ宮 勇気
    2025 年8 巻 p. 299-311
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/10
    研究報告書・技術報告書 フリー
feedback
Top