循環器理学療法学
Online ISSN : 2758-0350
症例研究
静注強心薬投与中に段階的な運動療法と食事療法を行い自宅退院に至った若年拡張型心筋症の一例
古山 勇気阿部 隆宏小島 尚子堀弘 明千葉 健由利 真向野 雅彦
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2024 年 3 巻 1 号 p. 49-58

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抄録

〈はじめに〉

近年,静注強心薬投与中の重症心不全患者に対する心臓リハビリテーションの安全性や有効性に関する報告が散見されているが,エビデンスは十分ではない.今回,若年拡張型心筋症に対する静注強心薬投与中から段階的な運動療法と食事療法を行い,自宅退院が可能となった症例を経験したので報告する.

〈症例〉

既往歴のない40歳代男性.下腿浮腫や労作時息切れを主訴に近医入院し,低心拍出に対してドブタミン塩酸塩2γが開始された.血行動態の安定に伴い,ドブタミン塩酸塩を中止,精査加療目的に当院へ転院となったが,入院後の検査所見により再びドブタミン塩酸塩が開始となった.ドブタミン塩酸塩投与中は,血行動態の変化や不整脈に注意し,段階的な離床と低強度レジスタンストレーニングを行い,管理栄養士と連携して摂取エネルギー量およびたんぱく摂取量の調整を行った. ドブタミン塩酸塩中止後は,心肺運動負荷試験の結果に基づいた運動処方を基に有酸素トレーニングを行った.第61病日に自宅退院となり,週1回の外来心臓リハビリテーションを継続した.

〈結果〉

ドブタミン塩酸塩投与中は,心不全の悪化なく離床が進んだ.退院時には,入院時と比較して,Barthel Indexが70点から100点,握力が29.0kgから31.9kgへ各々改善し,BMIは最低値の16.8kg/m²から17.2kg/m²へ改善した.最大酸素摂取量は,入院中の18.4mL/kg/minから退院6か月後で27.1mL/kg/minまで改善した.

〈結論〉

静注強心薬投与中の拡張型心筋症症例において,早期離床や運動療法,食事療法からなる段階的な心臓リハビリテーションは心不全の悪化なく安全に実施でき,身体機能や運動耐容能を改善した.

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