2024 年 3 巻 1 号 p. 67-76
〈目的〉
本研究の目的は,心臓血管外科手術後の術後1日目の早期離床を阻害した要因を当院の実績とガイドラインの基準に基づいて明らかにすることである.
〈方法〉
102例の心臓血管外科手術患者を対象に,術後1日目の離床の状況,ガイドラインに基づいた離床を阻害した要因,離床の状況によるリハビリテーションの進行状況ついて調査した.また,術後1日目の離床状況に基づいて,リハビリテーションの進行状況を離床可能群と離床困難群の2群に分けて比較した.
〈結果〉
離床困難群は28例で,阻害要因は主に開始基準を満たしていない要素と中止基準に該当する要素であり,具体的には術後出血傾向と術後挿管時間,疼痛と嘔気が挙げられた.さらに,離床可能群に対して立位,歩行,階段昇降の各開始日,リハビリテーションパス完遂日,術後在院期間で有意に遅延した.
〈考察〉
術後出血傾向,術後挿管時間,疼痛や嘔気が早期離床を阻害する要因であり,安全性を最優先にしつつリハビリテーションプログラムを調整することが重要であると考える.
〈結論〉
本研究では,心臓血管外科手術後の術後1日目の早期離床において,ガイドラインに基づいて早期離床を阻害する要因を特定した.その結果,開始基準を満たしていない項目として術後の出血傾向および術後の挿管時間,中止基準に該当する項目として疼痛と嘔気であることが明らかになった.これらの知見に基づいて,全身状態や全身管理状態の変化を的確に把握し,早期離床に伴う有害事象の発生を安全に回避することが重要だと考える