2021 年 66 巻 p. 13-19
奈良県,鳥取県,東京都に所在する5遺跡において弥生時代前期,同中期および同後期から古墳時代前期の土層から検出された12個の塊状の出土米ブロックを対象に,SPring-8において放射光を用いたX線Computed Tomography(CT)計測を実施した.X線CT画像の解析から,出土米ブロックには籾と穂の一部が含まれており,12個の出土米ブロックに含まれる籾はすべて温帯ジャポニカ型であった.その籾長と籾幅は,多くの場合,出土米ブロック間で異なっており,それらの変異幅は現在品種と同様に小さな正規分布を示した.これらのことから,出土米ブロックに含まれる籾は,それぞれ異なる籾の形を有する温帯ジャポニカのイネに由来することが示唆された.そして,鳥取県の青谷上寺地遺跡の出土米ブロックの籾は,他のブロックに比較して籾長に対して籾幅が大きく籾長/籾幅比の小さな籾の形であったと推察された.