作物研究
Online ISSN : 2424-1318
Print ISSN : 1882-885X
ISSN-L : 1882-885X
製蝋業の大規模導入にともなって生じた栽培ハゼノキ(Toxicodendron succedaneum (L.) Kuntze)から近縁野生種ヤマハゼ(Toxicodendron sylvestre (Siebold et Zucc.) Kuntze)への遺伝的浸潤
堀端 章寺口 友基橋本 結衣谷本 隆
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 68 巻 p. 15-23

詳細
抄録
江戸時代中期,製蝋業の興隆にともなって,九州からもたらされたハゼノキが関東以西で大規模に栽培されるようになった.ハゼノキの大規模栽培が行われた和歌山県紀美野地区では,栽培ハゼノキから近縁野生種ヤマハゼへの遺伝的浸潤が起こったとみられる.本研究では,この地域で採取したハゼノキおよびヤマハゼのRAPD-PCR とクラスター分析を行い,新産業導入が近縁野生種の遺伝的多様性に与えた影響について検討した.その結果,この地域ではハゼノキとヤマハゼの交雑が進んでいて,典型的なヤマハゼは既に消滅していることが示唆された.また,製蝋業が衰退し,ハゼノキ園が管理されなくなると遺伝的浸潤の速度が増すこと,花粉や種子が小鳥によって運搬されるハゼノキやヤマハゼでは,針葉樹の経済林が遺伝的浸潤の障壁となる可能性も示唆された.
著者関連情報
© 2023 近畿作物・育種研究会
前の記事 次の記事
feedback
Top