日本教科教育学会誌
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運動種目についての小学校教師の認識(I) : 基礎的運動の関わりと必要性
佐藤 裕山本 都久古川 雅文坂本 和丈則元 志郎森 敏夫松田 幸夫橋本 晃啓口野 隆史中瀬古 哲
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1986 年 11 巻 3 号 p. 115-124

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抄録
本研究では授業で扱われている運動種目に対する小学校教師の認識を明らかにすることを目的に小学校教師を対象に意識調査を行い,198名分の有効データを収集した。質問の内容は次のとおりである。(1)運動種に基礎的運動(走る,跳ぶ,投げるなど)がどの程度かかわっているか。(2)基礎的運動それぞれにおける能力的要素(例えば,走るにおける持久力としての走りつづけるなど)は運動種目にどの程度必要か。この2つの設問に対する教師の5段階評定を得点化し,因子分析を行った。さらに,因子得点(代表的項目の平均得点)を算出し,分析したところ,以下の結果が得られた。1)質問(1)についての因子分析の結果,「手技」,「脚運動」,「回転運動」の3因子が抽出された。2)小学校教師は運動種目を各学年で6つのグループに分けて捉えている。この分けかたは,学習指導要領に示されている小学校高学年の5つの領域(水泳を除く)とかなり対応的である。3)高学年の運動種目の因子得点平均値の分布は,低学年にくらべて広い範囲にわたる傾向がみられた。4)質問(2)の因子分析の結果,基礎的運動ごとにまとまる9因子が抽出された。このことから,小学校教師は,能力的要素の視点からではなく,基礎的運動の視点から運動種目のまとまりを捉える傾向が示唆された。5)経験年数の豊富な教師は,少ない教師に比べて,運動種目に対する各基礎的運動のかかわりを高く評価していた。これらの結果は,運動種目の教材化,系列化の観点から考察が加えられた。
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© 1986 日本教科教育学会
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