抄録
工芸教育は,実用目的と審美的な目的をあわせ持つ造形教育として,小・中・高等学校教育の中に,それぞれ「図画工作」,「美術」,「工芸」などの科目の一領域として設定されている。しかし,現実には,施設・設備や経費,指導者の人材の問題などから,特に高等学校においては開設が困難な状況にある。更に,工芸の特質として製作過程や要求能力を比較的明瞭に提示可能な側面を持つ反面,素材の多様さから総合的な工芸教育教材の構造が不明瞭になりやすいという問題も伴っている。従って,工芸教育は,その教科の構造,及び教材の構造をいくつかの視点によって明らかにする必要がある。本稿では高等学校の工芸教育について,素材,技術,道具,機能を構造化の軸とし,学習過程における教材の構造的把握を試み,更に工芸の素材による類型から,総合的な工芸の能力の必要性を導くものである。