抄録
社会の国際化に伴い,近年日本に滞在する外国人子弟が日本の小中学校で学ぶ数が増加しつつある。そこで母国語の他に,第二言語としての日本語教育(JSL : Japanese as a Second Language)の重要性が求められてきた。我が国は単一民族,単一言語,単一文化の国であるために,このような言語教育の経験に乏しいが,アメリカ,カナダ等の多民族国家においては,第二言語としての英語教育(ESL : English as a Second Language)の経験が豊富である。そこで本研究は,これらの国で実施されているESL教育の実地調査に基づいて,その教育理念,内容,方法,課題等について報告し,日本語教育のあり方について考察しているものである。特に,ESL教育の理念や課題は長い経験から得られたものであり,これからの日本語教育の上に,貴重な助言となると思われる。